このプレゼンを聴いてその本に興味を持たない人はいません(断言)。
「アフター6ジャンクション」(TBSラジオ)に声優でエッセイストの池澤春菜さんが出演し、おすすめ小説を紹介しました。
そのときのプレゼンが凄まじく、それでいて魅力的な内容でした。個人的には、紹介された本や著者だけでなく池澤春菜さんのファンになってしまうほど。
いまもラジオクラウドで当時の放送を聴きなおせるため、あらためてシェアする目的で放送内容をまとめ、紹介していきます。
「おすすめラジオトピック」では各種ポッドキャストサービスで聴きなおせるラジオ番組を紹介しています。聴きなおせるサービスやリンクを記載しているので記事だけでなく、ぜひ放送内容を確認してみてくださいね。
池澤春菜さんによるオススメ本紹介/その1「初出演編」
番組名 | アフター6ジャンクション |
放送局 | TBSラジオ |
放送日 | 2018年11月6日 |
タイトル | 【アーカイブ】アフター6ジャンクション カルチャートーク:池澤春菜さん(おすすめの小説) |
時間 | 約21分 |
URL | [ラジオクラウドURL]https://nhsw9.app.goo.gl/7zJkgrUfvx7NSf3t9 |
↑この情報はラジオクラウドで検索する際の参考にしてください。
放送時はアフター6ジャンクション(以下、アトロク)1年目の放送。秋の推薦図書ウィークと題して初めて池澤春菜さんが出演されました。
池澤春菜さんは声優、エッセイスト。お父上は池澤夏樹さん、祖父は福永武彦さんという生粋の文学一家。
なんと年間300冊を読む読書家で小学校時代は学校の図書館の本を読みつくしてしまったそう。そして親に「転校したい(新しい本に出会えるから)」と申し出て心配される、というエピソードも語っていました。
紹介された本と、コメントの要約
この回の放送では、「日本人の小説家でSF作家中心」の本を3冊紹介しています。
以下にその本と紹介時コメントの要約をまとめました。
「オブジェクタム」(高山羽根子)
書名 | オブジェクタム |
著者 | 高山羽根子 |
出版社 | 朝日新聞出版社 |
本体価格 | 1,300円 |
商品コード | 978-4-02-251564-3 |
小学生の頃、祖父はいつも秘密基地で壁新聞を作っていた。手品、図書館、ホレリスコード、移動遊園地―大人になった今、記憶の断片をたどると、ある事件といくつもの謎が浮かんでは消える。第2回林芙美子文学賞受賞作「太陽の側の島」も同時収録。
-内容(「BOOK」データベースより)
放送時の要約
美しい言葉と美しい世界で、小説を読むというより端正な白昼夢を見ているような本。
自分の目の前に言葉で作られた、とても綺麗な映像が浮かんでくる。その映像につられて世界が裏返っていくような、そんな凄まじい物語。
(筆者注、標題の「オブジェクタム」について)男の子とおじいちゃんが秘密の壁新聞を作る話。とりたてて特別な点は無いように思えるけれど、それを読んでいると少しずつ不思議なことが入っている。その不思議なことがあまりにも静かにしみ込んでくるので、不思議だと思わないまま読み進めてしまう。そして、気が付いたときに自分が読んでいる世界がまるで変わってしまう、この魔法が素晴らしい。
初出演ながら圧巻の書評でした。宇多丸さんはもちろん、パートナーの宇垣美里さんが圧倒されているのが音声越しでも伝わってきます。
「ハロー・ワールド」(藤井太洋)
書名 | ハロー・ワールド |
著者 | 藤井太洋 |
出版社 | 講談社 |
本体価格 | 1,500円 |
商品コード | 978-4-06-513308-8 |
専門を持たない「何でも屋」エンジニアの文椎の武器は、ささやかなITテクニックと仕事仲間と正義感。郭瀬と汪の3人でチーム開発した、広告ブロッカーアプリ“ブランケン”が、突然インドネシア方面で爆発的に売れ出した。“ブランケン”だけが消せる広告は政府広報だ。東南アジアの島国で何が起こっているのか―。果たして彼らはとんでもない情報を掴んでしまった。文椎は、第二のエドワード・スノーデンなるか?
-内容(「BOOK」データベースより)
放送時の要約
本当に少しだけ未来の話。主人公の名前は文椎(フツイ)さん。著者は藤井さんなので、私小説的な内容でもある。
テーマはテクノロジーで広告ブロッカーやドローン、GPS、マストドン(注、ミニブログ型SNS)やビットコインを素材にした少し未来の話。
著者の藤井さんは元々技術畑の出身で、テクノロジーへの理解が深い。そして、少しだけお人よし。(その理由は)人を信じている、人の可能性を信じているから。
テクノロジーは良い面も悪い面もあるけれど、この小説の主人公は真摯に考えて道を歩んでいく。各種専門用語もやさしく解説しているのでテクノロジーに明るくない人でも大丈夫。
「零號琴」(飛浩隆)
書名 | 零號琴 |
著者 | 飛浩隆 |
出版社 | 早川書房 |
本体価格 | 2,300円 |
商品コード | 978-4-15-209806-1 |
はるかな未来、特種楽器技芸士のセルジゥ・トロムボノクと相棒シェリュバンは、大富豪のパウル・フェアフーフェンの誘いで惑星“美縟”に赴く。そこでは首都“磐記”全体に配置された古の巨大楽器“美玉鐘”の500年ぶりの再建を記念し、全住民参加の假面劇が演じられようとしていた。やがて来たる上演の夜、秘曲“零號琴”が暴露する美縟の真実とは?飛浩隆、16年ぶりとなる第二長篇。
-内容(「BOOK」データベースより)
放送時の要約
飛浩隆さんの16年ぶりとなる著作。飛浩隆さんは多作ではなく佳作な人。1作1作が凄まじい内容で、日本SF大賞を過去2回受賞している。毎回大賞を受賞してしまうので、もはやベストジーニストのように殿堂入りすべきではないかと思っている。
零號琴は未来の話で惑星「美縟(びじょく)」が舞台。その惑星の500年建国祭に音楽と仮面劇を国民全員で行う。演劇には「零號琴(れいごうきん)」というかつて失われてしまった曲を復活させる必要がある。そしてそれには「美玉鐘(びぎょくしょう)」という、街ひとつ、大陸ひとつを使うくらい巨大な鐘(楽器)が必要。
凄まじい情報量が重なり重なってとんでもないところまで持っていく、人の想像力の限界かな、と思える話。
こうも難解なストーリーをわかりやすく、それでいて魅力的に伝える技術がすごいです!
まとめ
わたしは当時リアルタイムで聴いていて、池澤春菜さんによる本のプレゼン内容が素晴らしく、衝撃を受けたのを覚えています。
「端正な白昼夢」「美しい眩暈」など普段聴きなれない単語ですがスッと内容が入ってくる。とにかく話し方のトーンや間の取り方がうまいのです。
また、記事にまとめるため、今回あらためて聴きなおしましたが、聴き手である宇多丸さんと宇垣さんの話への引き込まれっぷりも印象的でした。
※余談ですが、宇垣さんがよっぽど気に入ったのか、以降の池澤春菜さんの出演はほとんど火曜日(宇垣さんの出演曜日)になっています。
ということで、池澤春菜さんによるおすすめ本紹介に関する放送のまとめでした。ここでは内容の一部を要約しただけなので、ぜひラジオクラウドで放送内容をチェックしてみてくださいね。
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