【アトロク】堀井美香さんによる「ごんぎつね」朗読指導/宇内梨沙アナファンも必見の神回!<おすすめラジオトピック>

とんでもなく面白いうえに、情報量も多い神回でした。

2002年8月13日のアフター6ジャンクションでは『堀井美香さんによる「ごんぎつね」朗読指導』という特集。ナレーションのプロであるTBSアナウンサーによる読みの技法の解説です。

面白さと情報量の濃さが両立した神回でした。ぜひ聴いてほしい!という思いから、ここでは放送内容のダイジェストと聴きなおしができるサービスを紹介していきます。

おすすめラジオトピックについて

「おすすめラジオトピック」では各種ポッドキャストサービスで聴きなおせるラジオ番組を紹介しています。聴きなおせるサービスやリンクを記載しているので記事だけでなく、ぜひ放送内容を確認してみてくださいね。

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【アトロク】堀井美香さんによる「ごんぎつね」朗読指導/宇内梨沙アナファンも必見の神回!<おすすめラジオトピック>

番組名 アフター6ジャンクション
放送局 TBSラジオ
放送日 2020年8月13日
タイトル 特集: TBSが誇る朗読ガチ勢!堀井アナのガチ朗読教室!(ゲスト:堀井美香)
時間 52分
放送アーカイブ 「ラジオクラウド」アプリ
Spotify

[ラジオクラウド URL]
https://nhsw9.app.goo.gl/3XH7iikuDaAqW17p9

[Spotify URL]

出演者

レギュラーパーソナリティ ライムスター宇多丸
宇内梨沙(TBSアナウンサー)
特集ゲスト 堀井美香(TBSアナウンサー)

20時台の特集ゲストはTBSアナウンサーの堀井美香さん。
この日は2020年8月16日(日)に放送される『戦後75年特別番組 日能研presents ラジオドラマ「青空」』の宣伝も兼ねた特集。堀井さんはこのラジオドラマのプロデュースをしています。

TBSが誇る「朗読ナレーション」のプロ堀井美香アナウンサーに、『ごんぎつね』の朗読メソッドを徹底指導して頂きます。
-番組紹介文より

放送内容をダイジェストで紹介

ラジオドラマ「青空」について

ラジオドラマ「青空」は戦争ものの朗読劇。元々は(「方南ぐみ」による)朗読劇で、許可を取って今回ラジオドラマ化したもの。

戦争関連の企画をした理由について、「ジェーン・スー 生活は踊る」でのスーさんとのやり取りに触れています。「スーさんはエッセイで書くことができる、なら私はA’LOUNGEでやろう」と感じたとのこと。

A’LOUNGEについて

A’LOUNGE(エーラウンジ)はTBSアナウンサーによる朗読劇。堀井美香さんはこの企画のプロデュースをしています。ちなみに、ラジオドラマ「青空」は第7回目のA’LOUNGEとなっています。

また、「青空」では宇内梨沙さんが主役の少年役に抜擢。その理由について堀井さんは以下のように語りました。

・普段の宇内アナウンサーはアナウンス室ではおとなしくガツガツした感じはない
・けれどアフター6ジャンクションでの宇内さんはポテンシャルがある、という話を同僚としていた
・「青空」の企画が出たときに、絶対に宇内さんにやってほしいと思った

堀井美香さんいわく「宇内で泣ける」。

朗読をロジックで理解したい

特集本編は堀井美香さんによるnoteでの連載note『教科書を読む「ごんぎつね」』をベースに朗読指導をしていきます。


参考
教科書を読む「ごんぎつね」①note 堀井美香/TBSアナウンサー

また、堀井美香さんは朗読を研究している理由について以下のように語っています。

「俯瞰で読んで」、「感情をのっけて」、「人に分かるように」といった読みの指導方法があるが、これをロジックで理解したかった。言葉に起こすと、どこをどう立てればよいのかが知りたい。これが20年読みの仕事をするなかで、少しずつ解析できてきた。

例えば「ここは0.1コンマ間を空ける」といった技術論は小手先だと言う人もいる。けれど、物語をわかりやすく、聞き取りやすくするためには言語としてどう立たせればよいのか。定型を作ってそのルールで規定演技をすると、初めて聞く文章でも聞き取りやすくなる。

なぜ「ごんぎつね」を選んだのか

著作権フリーで、教科書に載っている物語だったから。堀井さん曰く「ごんぎつねに対する特別な思い入れはない」とのこと。

ちなみに「ごんぎつね」と言えば、アフター6ジャンクションで過去に特集あり。「2018年10月 ごんぎつねに始まる感動コンテンツ」。今回はあくまで朗読の教材として扱っています。




本編 堀井美香さんによる「ごんぎつね」朗読指導

今回の放送は「ごんぎつね」の冒頭部分について、読み方の指導をしています(以下参照)。

ごんぎつね

 

これは、私が小さいときに、村のもへいというおじいさんからきいたお話です。
むかしは、私たちの村のちかくの、中山というところに小さなお城があって、中山さまというおとのさまが、おられたそうです。
その中山から、少しはなれた山の中に、「ごんぎつね」という狐がいました。ごんは、一人ひとりぼっちの小狐で、しだの一ぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出てきて、いたずらばかりしました。はたけへ入って芋をほりちらしたり、菜種がらの、ほしてあるのへ火をつけたり、百姓家の裏手につるしてあるとんがらしをむしりとって、いったり、いろんなことをしました。  ー青空文庫よりー

「ご」の発声位置

始めはごんぎつねの「ご」から。

第一声はなかんずく大事、大変に大事。
世阿弥の言葉に「一調・二機・三声」というものがある。

これは、発声に関する心構え。1に心を整え(調整する)、2は機会、間やタイミングをみる、3に初めて声になるということ。

つまり、間があって整えがあって初めて「ご」が出てくる。

どういうイメージで、誰に向けて、どういう会場でやるか。

例えば対象が一人だったら 硬くて芯のある「ご」を20cm下に落とすイメージ。口の開きが小さくて硬い。大きい会場で(または多くの人に伝えるのであれば)あれば、「ご」をもっと広く上に放り投げるように発声する。

世阿弥とジャパネットたかた

ここでは、世阿弥と「ジャパネットたかた」の意外な関係性について語られています。
高田昭(今の社長のお父様ですね)さん「一調・二機・三声」を無意識に実践している一人と言っています。堀井さんのおすすめ本として「高田昭と読む世阿弥」を紹介。

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「ご」の音色について

言葉自体に耳障りや触感がある。また音色がある

・例えば「ご」は硬いイメージ
・つばきやぼたん(濁音)はボテっとしている
・さくらやすみれはサラサラしているイメージ

「ご」の音色。ドレミファソラシド、ドの周りに無限に音があるり、それらが繋がっている。この周りの音色をどのように使っていくか。

炊き立ての「ごはん」と二日目の「ごはん」で発声の仕方が違う。前者は「ご」はすっきり、シャープな発音。後者の「ご」は「ぉ」とか「ぇ」とか「ぁ」が交じった感じになる。

「ご」の音の高さ

音の高さでも言葉の印象が変わってくる。
驚いたときの「ご」、悲しいときの「ご」、いちゃもんつけるときの「ご」、確認するときの「ご」。音の圧とか距離感・音色が変わってくる。

第一声は必然で出てくる。空気が合って温度が合って会場があって。

「ご」について

ここまで約30分。実質ごんぎつねの「ご」特集になっています。結果、堀井さん、宇多丸さん、宇内さんがひたすら「ご」を連呼する異質な放送に。放送時はひたすら笑っていましたが、あらためて聴きなおしてみると情報量の多さも相当なものでした。

「ご」から先の読み方について

「これは、私が小さいときに、村のもへいというおじいさんからきいたお話です。」

言葉をどう読むかによって、伝わりかたが違う。
固有名詞をはっきり読むと実在した感じに、少しくゆらせると神秘的な伝わり方になる。

例えば「わたしはTBSのドラマが好きです」という言葉の発声について、どこを立てるかで伝わり方が変わる。
(内容は以下、堀井美香さんのnoteの内容と同様です)

普段の会話でも、強調したいところは強めに出ますよね。例えば「わたしは、TBSの ドラマが すきです。」という文。あなたでもあの人でもなく、このわたしがすきなんです。という時は「わたしは、TBSの ドラマが すきです。」とわが高くなりテンションがかかります。日テレさんでもフジテレビさんでもなく、TBSのドラマが好きという時は「わたしは、TBSの ドラマが すきです。」バラエティでもニュースでもなく、ドラマ好きという時は「わたしは、TBSの ドラマが すきです。」嫌いでも普通でもなく、好きなんだ!という時は「わたしは、TBSの ドラマが すきです。」となったりします。

-堀井みかさんnote 教科書を読む「ごんぎつね①」より

「むかしは、私たちの村のちかくの、中山というところに小さなお城があって、中山さまというおとのさまが、おられたそうです。」

ここは位置関係をしっかりする必要がある。

村の中にある中山だと中山(の音程)が少し下がる。これは村の近くにある中山、なので音のピッチは同じ(対等)になる。

中山は城下町なので少し含みを持たせて発声する。情景を想像させる時間が必要。

また、村と中山は近い、中山と山の中は少し離れている。間と言い方で距離感を表現する。

「中山というおとのさまが、おられたそうです。」

この「おられたそうです。」の部分はストーリーテラーが「もへい」なのか「読んでいる私たち」なのかによって発声が変わる。
間接的に語られていることを強調した方が良い。

「その中山から、少しはなれた山の中に、「ごんぎつね」という狐がいました。」

(前行の「おられたそうです。」)の「す」の母音「う」を伸ばして「そ」をかぶせる。「その中山から~」と発声することで前の二行を含むことができる。気持ちを残す、ブレス(息継ぎ)をガッツリ入れない方がよい。

ここで出てくる「ごんぎつね」は無機質な言葉。一文字ずつ粒立てて読む(フラットに読む)。

「ごんは、一人ひとりぼっちの小狐で、しだの一ぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。」

ここで「ごん」と愛称になっているので、先ほどの「ごんぎつね」と言葉の出し方が変わってくる(柔らかくなる)。

どの目線でみているかで言葉の出し方が異なってくる。

ごんは、一人ひとりぼっちの小狐で、しだの一ぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出てきて、いたずらばかりしました。はたけへ入って芋をほりちらしたり、菜種がらの、ほしてあるのへ火をつけたり、百姓家の裏手につるしてあるとんがらしをむしりとって、いったり、いろんなことをしました。

時間が無くなってきたため、このパートは宇内アナウンサーによる朗読からスタート。
※指導されていない箇所をいきなり読み、テンパってしまう宇内さんがたじろぐ姿が目に浮かぶ、最大の聴きどころです。




まとめ

「人んちの番組なのでおめおめと帰ります」という腰の低さで油断させ、宇多丸さんも宇内さんも全員ぶちのめして去っていった堀井美香さん。

最後に良い朗読とは何か、と問われた堀井美香さんが

私が言ったことを全部忘れてください。それが良い朗読です。」

という発言にTwitterがザワついたのも趣深いです(反転させると文字を確認できます)。

面白いし、聴きなおすと発見も多く個いこの放送。個人的にはアトロクの神回の一つとなりました。

他にも普段の宇内さんはTBSアナウンス室では大人しい、といった情報や特集冒頭の様々な声色での「TBSアナウンサーの宇内梨沙です」の発声など、うなぽんファンも必聴です。

ここではダイジェストを紹介しましたが、これは絶対に音声で聴いてほしいコンテンツ。ラジコのタイムフリー期間が過ぎても、ラジオクラウドやSpotifyで聴きなおせるので、ぜひチェックしてみてください!

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