【書評】男性にこそ読んでほしいフェミニズムの入門書7冊を紹介。まずは、知るところから始めよう。

「価値観のアップデート」、一度は見聞きしたことがある単語ではないでしょうか。

近年では、2010年代後半の#MeTooムーブメント以降は特に、人種や性差による差別は今まで以上にNGとなりました。

今回は、私が実際に読んだフェミニズムを知るための本をまとめて紹介します。

1.82年生まれ、キム・ジヨン

男性のどのような言動が問題(差別的)なのか、物語を通じて疑似体験できる小説です。

「82年生まれ、キム・ジヨン」は韓国で100万部を超えるベストセラーとなったフェミニズム小説。主人公の”キム・ジヨン”は韓国の女性にもっとも多く見られる名前。つまり「82年生まれ、キム・ジヨン」は韓国の一般的な女性が普通に生きる様を描いた小説です。

本書からは「女性が社会で普通に暮らす」ことがいかに過酷か、その一端を垣間見ることができます。

本書に登場する男性の一例
・胸の大きい女生徒に対しセクハラをする教師
・主人公が「笑顔でプリントを渡してくれた」という理由で勘違いし、付きまといをする同じクラスの男子学生
・飲み会の場でセクハラをしてくる取引先の男性上司
・家事や育児を「手伝う」と表現する夫

こうした、(私自身も含めた)男性たちによる性差別的な言動に対して、それを女性たちがどのように受け止めていたのか、物語を通じて疑似体験ができます。

「82年生まれ、キム・ジヨン」の物語は、隣国である韓国が舞台。ですが、私は読んでいて日本の現状との共通点の多さ感じずにはいられませんでした。

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筑摩書房
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書名 82年生まれ、キム・ジヨン
著者 チョ・ナムジュ / 斎藤真理子 訳
出版社 筑摩書房
本体価格 1,500円+税
商品コード 978-4-480-83211-5

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2.その名を暴け

「ワインスタイン事件」の調査報道をまとめたノンフィクションが「その名を暴け」です。

世界中の性差別に対する意識を問い直した#MeTooムーブメント。この運動のきっかけとなったのが「ワインスタイン事件」。ハリウッドの大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン氏による女優や女性従業員に対して行ってきた性的暴行の事実を、ニューヨークタイムズが報じたものです。

この報道は同じような性的暴行を受けた女性たちが声を上げる、いわゆる#MeTooムーブメントを世界中に広げるきっかけにもなりました。

本書「その名を暴け」は世の中のジェンダー観のパラダイムシフトを起こした報道の記録であり、自身のジェンダー、フェミニズム観を見つめなおすのに必読の1冊と言えます。

書名 その名を暴け
著者 ジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー / 古谷美登里 訳
出版社 新潮社
本体価格 2,150円+税
商品コード 978-4-10-507171-4

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3.さよなら、俺たち

「さよなら、俺たち」は男性による男性に向けたジェンダーエッセイ集。著者の清田氏は「桃山商事」というグループで、恋愛やジェンダーに関する情報をコラムやラジオを通じて発信する活動をしています。

本書の内容のほとんどは著者の清田氏の体験をもとにして書かれています。

・なぜ男性は相手の話を聞くことができないのか
・男友達だけの場とそうでない場でキャラクターが変わるのは何故なのか
・なぜ女性は男性の前で泥酔すると、性的同意をしたと誤った認知をされてしまうのか
・男性が「男性である」というだけで得られている特権は何か

自身の行動からこうした男性に多い行動の理由を深掘りします。

男性の読者の中には身につまされる感情や、辛い思いをしながら読むことになる人もいるかもしれません。ですが、「俺たち」から「私」という個人として生きていくために、ジェンダーについて知ることは必要なプロセスではないでしょうか。

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書名 さよなら、俺たち
著者 清田隆之
出版社 スタンド・ブックス
本体価格 1,700円+税
商品コード 978-4-909048-08-0

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4.才女の運命

「才女の運命」ではロダンやアインシュタイン、シューマンといった偉人の伴侶や恋人となった女性たち。

彼女たちはみな、文学や芸術の才能に秀でており将来の希望に満ちています。そして、男性たちもその才能に惹かれ、パートナーとして一緒に人生を歩み始めます。

しかし、結婚後は家事や育児など日々の営みは避けて通れません。この日常生活のツケはほとんどの場合、女性側が払わされることになります。男性たちが彼女たちのサポートで偉業を成し遂げる傍らで、彼女達の存在はほとんど意識されることはありません。

本書を読むと、男性であるという特権について否が応でも意識させられます。

どうして女性の天才はいないのだろうと、わたしはこのごろ考えています。作家にも、画家にも作曲家にも女性の天才はいない。それは、力のある女性たちがその情熱と能力のすべてを家族や愛するもの、夫のために、そしてとりわけ子どもたちのために浪費してしまっているからなのです。
-ロシアの文豪、トルストイの妻ソフィア・アンドレイェヴナ・トルストイの手記より

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フィルムアート社
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書名 才女の運命
著者 インゲ・シュテファン/著 松永美穂/訳
出版社 フィルムアート社
本体価格 2,000円+税
商品コード 978-4-8459-1930-7

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5.レイシズム

レイシズムとは「人種主義」、レイシストは「人種主義者」のことですが、そもそも彼らの言うレイシズムに根拠はあるのでしょうか。

本書では文化人類学の視点から、純粋な人種や民族は存在しないことを一つ一つ丁寧に明らかにしていきます。

レイシストは自分を正当化し相手を迫害するための妄言ということが良く分かります。国や皮膚色の違いという二元論は難しいことを考える必要がありません。

本書はジェンダーに関する内容ではありませんが「人はなぜ差別するのか」を考えるきっかけになる本です。

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書名 レイシズム
シリーズ 講談社学術文庫
著者 ルース・ベネディクト、阿部大樹/訳
出版社 講談社
本体価格 920円+税
商品コード 978-4-06-519387-7

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6.モテたいと思っている男ってなんであんなに気持ち悪いんだろう

ド直球で心に刺さるタイトル。ですが、それだけではありません。

著者は男性で元セクシー女優の大島薫さん。23 歳で女性の格好で過ごすようになった著者の大島薫さん。

女性の姿で過ごすようになってからチカンに遭ったり、呑み屋で見知らぬ男性から口説かれるような経験をしたそう。

そんな大島さんだからこそ伝えられる、女性への接し方を82のエッセイを通して解説しています。

ここまでの通り、本書はフェミニズムに関する本ではありません。どちらかというと男女のコミュニケーションについて書かれているのですが「10.男性は常にナイフ片手で女性に話しかけている意識をもったほうがいい」など、ハッとさせられる内容も。

正直、読者の男性にとって読んでいて痛いところを突かれる部分も多く、楽しい読書体験にはならないかもしれません。ですが、他者との接し方を見直す上で一読の価値あり、な本です。

書名 モテたいと思っている男ってなんであんなに気持ち悪いんだろう~本当にうまい女性のほめ方~
出版社 竹書房
著者 大島 薫
商品コード(ISBN) 9784801920842
価格 1,500円+税

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7.女の人を怒らせない技術

この本は「反面教師」な本かもしれません。本書は職場における女性とのコミュニケーション術を説いたビジネス書。
多くの女性社員と仕事をしている男性による著作。そもそものタイトルや女性をタイプ別に見分ける等、内容にも色々とNGな点は多い本。ですが、実体験による失敗をもとにして書かれた内容という点においては大いに参考になるはずです。

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ダイヤモンド社
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書名 女の人を怒らせない技術 マンガでよくわかる女性とのコミュニケーションの鉄則
出版社 ダイヤモンド社
著者 近藤俊太郎 著 / サカモトトシカズ 漫画
商品コード(ISBN) 978-4-478-10592-4
価格 1,300円+税

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まとめ

今回はフェミニズムを知るためのきっかけとなる本を紹介しました。

これらの本を読んで、私は以下のような感想を持ちました。

・ステレオタイプで相手を判断してはいけない

・相手がされて嫌なことを想像してコミュニケーションをする

・男性ゆえの辛さはあるけれど、男性だけで得られる特権は間違いなくある

ありきたりな感想になってしまいましたが、男女関係なく相手を尊重したコミュニケーションをしていきたいものですよね。

気になる本があったら、ぜひ読んでみてくださいね。ここまで見ていただき、ありがとうございました!

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