【書評】82年生まれ、キム・ジヨン(筑波書房) / 30代男性がフェミニズム小説を読みました

私たち男性たちにとって怖い小説かもしれません。

韓国で100万部を超えるベストセラーになった「82年生まれ、キム・ジヨン」の書評です。
本書は女性による女性に向けたフェミニズム小説。今回は男性の私が読んだ感想をお伝えしていきます。

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【書評】82年生まれ、キム・ジヨン

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筑摩書房
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書名 82年生まれ、キム・ジヨン
著者 チョ・ナムジュ / 斎藤真理子 訳
出版社 筑摩書房
本体価格 1,500円+税
商品コード 978-4-480-83211-5

誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児…彼女の人生を克明に振り返る中で、女性の人生に立ちはだかるものが浮かびあがる。女性が人生で出会う困難、差別を描き、絶大な共感から社会現象を巻き起こした話題作!韓国で100万部突破!異例の大ベストセラー小説、ついに邦訳刊行。

-商品紹介ページより

夫婦二人に娘一人の三人家族。貧乏でもなければ特別裕福でもない、いわゆる”普通の家庭”の妻であるキム・ジヨンが本書の主人公。

そんなキム・ジヨンはある日を境に突然、自身の母親や友人の人格が乗り移ったかのように振る舞い始めます。精神科に通う彼女はカウンセリングを受ける中で自身の半生、子ども時代から、学生、就活、結婚、育児…と自身の人生を振り返っていきます。

韓国でベストセラーに本書は2020年には映画化。日本でも上映されました。

男女間の格差を告発するフェミニズム小説

本書は韓国で大ヒットになったフェミニズム小説。つまりフィクションなわけですが、少し変わった内容となっています。

まず、文学っぽさを省いたシンプルな文体が特徴。合間に統計や歴史的背景の解説があり、ノンフィクションと文学の中間のような印象を受けます。また、
“キム・ジヨン”は韓国の女性にもっとも多く見られる名前。つまり「82年生まれ、キム・ジヨン」は韓国の一般的な女性が普通に生きる様を描いた小説なのです。

・日常生活で女性が受ける性的嫌がらせ(痴漢やセクハラなど)
・社会人としてのキャリアの積みにくさ、男女間の賃金格差
・結婚することで女性が失うものの多さ(苗字、キャリア、友人や同僚といった社会的ネットワーク…etc)

このように、本書では「女性が社会で普通に暮らす」ことがいかに過酷か、その一端を垣間見ることができます。

自分の無自覚さを突き付けられる

「82年生まれ、キム・ジヨン」は女性向けに書かれた小説ですが、私は男性にこそ読んでほしい本だと思っています。自身のジェンダー観を見直すきっかけになるはずだから。

本書はフィクションですが、現実離れした物語ではありません。主人公のキム・ジヨンは韓国における一般的な女性として描かれていますし、登場する男性たちも「こういう人、結構いるよね」と思えるような人物像ばかり。例えば以下のような感じです。

本書に登場する男性の一例
・胸の大きい女生徒に対しセクハラをする教師
・キム・ジヨンが「笑顔でプリントを渡してくれた」という理由で勘違いし、付きまといをする同じクラスの男子学生
・飲み会の場でセクハラをしてくる取引先の男性上司
・家事や育児を「手伝う」と表現する夫

こうした、(私自身も含めた)男性たちによる性差別的な言動に対して、それを女性がどのように受け止めていたのか、主人公を通じて疑似体験ができます。

私の場合は登場人物の発言が、過去の私自身の言動と重なり、背筋が寒くなる場面も。そして、「今まで悪意なく性差別的な発言をしてきた自分」にがっかりしました。まさに自身の無自覚さを突き付けられる気持ちでした。

こうした理由から男性が本書を読むと、居心地が悪い思いをするかもしれません。ですが、今までのジェンダー観を見直すきっかけにもなるはずです。

まとめ

「82年生まれ、キム・ジヨン」の物語は、隣国である韓国が舞台。ですが、私は読んでいて日本の現状との共通点の多さを感じました。女性のキャリアアップの難しさ、夫婦別姓、飲み会の場でのセクハラ問題等々。

これら日本のジェンダーギャップについては「その名を暴け」の書評に書いたので良かったらそちらも参考にしてみてください。

【書評】その名を暴け(新潮社)/ 世界中の性差別を問い直し、#MeTooムーブメントに火をつけた調査報道の記録

また本書がこれだけ売れているのは、物語として読ませる筆力の高さも理由の一つ。斎藤真理子さんによる丁寧な翻訳が読みやすいです、巻末の伊藤順子さんによる解説も一読の価値ありです。「82年生まれ、キム・ジヨン」が書かれた経緯、韓国での男女格差の現状、そして本書がどのような社会現象を巻き起こしたのかが、わかりやすく説明されています。

ただ、私が女性の気持ちを完全に理解することはできないんだろうと思います。また、男性である私が本書を推すのも欺瞞かもしれません。

それでも、フェミニズムを知るきっかけに。ぜひ手に取ってみてください。

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