【書評】「レイシズム」/人種や肌の色による差別に根拠は?今だからこそ読みたい本

なんで肌の色が違うだけで、こうも扱いが変わるんだろう。

2020年5月にミネソタ州ミネアポリスで発生した黒人男性を白人警官が死に至らしめた事件。これを端に発したBlackLivesMatter運動の高まりを見て感じたわたしの疑問です。

遠いアメリカの事件ですが、あまりにも酷い状況に憤りを感じました。ですが、あまりにも基礎的な知識がないため参考になる情報を集めていました。

その過程で購入した人種主義を解説した古典「レイシズム」を購入しました。専門知識がない私でも読みやすく、現状を理解する一助となりましたのでここで紹介したいと思います。

【書評】レイシズム

「レイシズム」の概要

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書名レイシズム
シリーズ講談社学術文庫
著者ルース・ベネディクト、阿部大樹/訳
出版社講談社
本体価格920円+税
商品コード978-4-06-519387-7

「レイシズム」という語は、本書によって広く知られ、現代まで使われるようになった。「白人」「黒人」「黄色人種」といった「人種」にとどまらず、国家や言語、宗教など、出生地や遺伝、さらに文化による「人間のまとまり」にも優劣があるかのように宣伝するレイシストたちの言説を、一つ一つ論破してみせる

-本書の紹介文より

アメリカの文化人類学者ルース・ベネディクトによるRACE OF RACISMの新訳。

レイシズムとは「人種主義」、レイシストは「人種主義者」のことですが、そもそも彼らの言うレイシズムに根拠はあるのでしょうか。

本書では文化人類学の視点から、純粋な人種や民族は存在しないことを一つ一つ丁寧に明らかにしていきます。

人種というものは存在する、が、レイシストの言う「純粋な人種」など存在しない、ということが理解できます。

レイシズムは迫害の歴史

「第七章 レイシズムの自然史」ではレイシズムがどのように生まれ1940年代当時に至ったのか解説がなされています。これはそのまま迫害の歴史と置き換えることができます。

イギリスが「新大陸」として現在のアメリカ大陸で先住民を支配、奴隷とする理由はコロコロと変わります。はじめは「信仰を持たない者だから」という理由で、不況により先住民で改宗する者が現れると彼らを「亜人(サブヒューマン、サルに近い者)」として迫害する。つまり迫害の口実が宗教から皮膚色という一番目立つ特徴にシフトしていったわけです。

また同様に、ドイツナチスによる事例も紹介されています。この場合、アメリカの事例と違いドイツ人もユダヤ人も同じヨーロッパ人。皮膚色や身長といった身体的な特徴や親族関係からユダヤ人を定義することは難しい。ではどうするかと言うと、考え方や行動の癖を口実にするのです。

「ドイツ人にふさわしい行動を取るものは、だれであれ皆ドイツ人である」
「ユダヤ人と頻繁に交わったり、ユダヤ新聞なんかを読んでいるだけで、ユダヤ人になってしまうのだ」

これだけでなく、ナチスによれば日本人の祖先は金髪碧眼の北方系と喧伝されたようです(当時ドイツと日本は同盟関係でした)。

もはやここまで来ると、何がなんだかわからなくなりますよね。ですが、こうした言説の理由についても一言で説明されています。

本質においてレイシズムとは、「ぼく」が最優秀民族の一員であると主張する大言壮語である。

個人の能力ではなく出自そのもので優劣が決まるのであれば、他に余計なことを考える必要がないですよね。

まとめ

わたしは、2020年のBlackLivesMatter運動の高まりからレイシズムに興味を持ち本書を手に取りました。

本書を読んで、レイシストは自分を正当化し相手を迫害するための妄言ということが良く分かりました。国や皮膚色の違いという二元論はシンプルで難しいことを考える必要がないですものね。

1942年に刊行された本書。最後の一文は以下のように締められています。

合衆国を建てた私たちの祖先は、押し潰されるひとを生まずとも国を治めることができるはずだと信じていた。その信念が間違っていなかったと証明するのは、私たちの責務である。

わたしたちが70年以上経っても同じことを繰り返している事実に悲しくなります。ですが、だからこそ知っておきたい知識でもあります。

また、新版の発売が2020年4月になったというのも偶然とはいえ、何だか運命的なものを感じてしまいますね。

この版は新約によるものか、非常に読みやすくおすすめです。気になった人はぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

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