【書評】「才女の運命」/男性であるという特権、男女の社会格差を浮かび上がらせる一冊

なぜ偉人は男性ばかりなのでしょう。

トルストイ、シューマン、アインシュタイン…。芸術でも学問でも大きな偉業を成し遂げた数多くの男性たち。
逆に、女性の偉人は少ないのでしょうか。彼女たちの能力が男性よりも劣っているから?決してそうではありません。

今回は「才女の運命 男たちの名声の影で」の書評です。本書は偉人たちを影になってしまった女性たちの姿を現代に浮かび上がらせる一冊。

それだけでなく、男女の社会的な機会の格差、男であるという特権

【書評】才女の運命

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フィルムアート社
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書名才女の運命
著者インゲ・シュテファン/著 松永美穂/訳
出版社フィルムアート社
本体価格2,000円+税
商品コード978-4-8459-1930-7

ロダン、アインシュタイン、シューマン…偉人の傍らで歴史から見捨てられた、気高き女性たちの魂の記録。
-商品紹介ページより

2020年に、初版から25年振りに改訂出版されたのが本書「才女の運命」。原著は当時ドイツのハンブルク大学教授だったインゲ・シュテファン氏による著作です。

偉人の影に隠れてしまった女性たち

「才女の運命」で取り上げられるのはロダンやアインシュタイン、シューマンといった偉人の伴侶や恋人。偉人の影で歴史的にほとんど語られることのなかった女性たちです。

彼女たちはみな、文学や芸術の才能に秀でており将来の希望に満ちています。そして、男性たちも彼女たちの才能に惹かれ、パートナーとなるわけです。しかし、結婚後は日常生活によって創作の機会は失われていきます。この日常生活のツケはほとんどの場合、女性が払わされることとなります。

このように、本書では才能と将来の希望に満ちた女性たちが、偉人の影で社会的・創造的搾取を受けてきた現実が浮かび上がってきます。

「才女の運命」に登場する女性の多くは自分の生の軌跡をほとんど残していないか、あるいは後世の人々によってその軌跡を消されてしまった人々。ですが、本書は彼女たちが直接書き残した日記や手紙といったわずかに残る資料を基にして書かれています。

ミレヴァ=アインシュタインの事例

ここでは例として、アインシュタインの最初の妻ミレヴァ=アインシュタインの事例について触れてみます。

彼女はチューリッヒ工科大学の当時唯一の女子学生。学友だったアインシュタインと気が合い、自然と恋愛関係になります。しかし、結婚前に彼の子どもを妊娠したことにより大学は中退。けれども、その後はアインシュタインと結婚し、共同研究のパートナーとして一緒に仕事を続けていた。

始めはアインシュタインの様々な論文は、共同論文としてミレヴァの名前も併記していたが、徐々に彼女の名前が論文に載らなくなる。

アインシュタインが相対性理論を発表したのは結婚から3年後。当時もミレヴァのサポートはあったと推察(※)されるが、論文はアインシュタインのみの署名が。そう、この時点で彼女は世間からは見えない存在になってしまいます。

※ミレヴァは数学が得意で、アインシュタインの発想を数学的に変換したりしていたそうです

その後はアインシュタインから離婚を申し込まれ婚姻関係を解消。晩年のミレヴァは、田舎で息子の面倒を見る生活を送りました。



ここまで読んで「アインシュタインって実はひどい奴だったのか」なんて感想を持ったかもしれません。

ですが、これは特別な例ではないのです。

文豪、音楽家、芸術家から科学者に至るまで。本書に登場する女性たちは不思議なほど同じ道を辿っています。才能ある男女のカップルにおいて、男性は社会的な成功を得るが、かたや女性は夢を諦めることになる、というパターン(そして多くの場合、女性は精神病院に隔離されてしまう)。

まとめ・男性であることの特権について

私は「才女の運命」を読んで、男性であることの特権ってあるんだよな、とあらためて感じました。本書は19世紀前半までの話ですが、そのまま現代に地続きになっている内容です。

家事や育児、そして男性をサポートするのが女性の役目。現代ではこうしたステレオタイプは薄まりつつありますが、依然そうした意識が根強いのも事実ですよね。

例えば、私の職場では女性の管理職は10%未満しかいませんし、取締役ともなると全員が男性です。そして来客の際のお茶出しは女性が担当。さらに、育休を取るのはほとんどが女性….etc。およそ信じられないかもしれませんが、他の会社も同じようなものではないでしょうか。

この事例における、昇進の機会が多い、事務作業をしなくて済む、子どもができてもキャリアを継続できる、という点については男性であるだけで得られる特権、と取ることができます。

このように、社会的に性別で役割が決められていることって、まだまだ多いですよね。そしてそれらはほとんどが暗黙の内に。

本書を読んでからは、こうした無自覚な特権について意識する場面が増えました。現状は男女の格差をあらためて認識した、というレベルですが、今後はこうした格差を少しでも解消できるように行動していきたいと思います。

中々まとまらず、長文になってしまいました。ここまで読んでいただきありがとうございます。「才女の運命」は特に男性に手に取ってほしい1冊。ぜひ手に取ってみてくださいね。

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