【書評】わかりやすさの罪(武田砂鉄)/読んでいて後ろ暗さを感じる、けれど何度も読み返したくなる本

わからないモノを、わからないままにしておく勇気も必要かもしれません。

フリーライターの武田砂鉄さん著「わかりやすさの罪」を読みました。
いわゆる世間一般ではわかりやすい事が良いものとされていますし、実際に「わかりやすさ」を売りにした本やTV番組が数多くあります。

そんな、わかりやすさの弊害や危うさについて書かれたのが本書「わかりやすさの罪」。わたし自身、読んでいて考えさせられる部分が多くある本でした。

ここからは以下に、本書のレビューをお伝えします。

【書評】わかりやすさの罪(武田砂鉄)

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書名わかりやすさの罪
著者武田砂鉄
出版社朝日新聞出版
本体価格1,600円+税
商品コード978-4-02-331876-2

日本語の極端な「わかりやすさ」の追求の果てに、日本人の思考、日本社会に今、何が起きているのか。損なわれたものとは。政治家の発言や池上彰氏の番組、「泣ける」映画、伝え方をノウハウを記したビジネス書などを挙げながら論じる。
-本書の紹介文より

著者はフリーライターの武田砂鉄さん。現在はラジオ番組「ACTION」(TBSラジオ、平日15:30〜17:30)の金曜日パーソナリティも務めています。

「わかりやすい」って本当に良いことなのか

一般的に「わかりやすい」ことは良い、とされる風潮があります。

TVでは誰でも理解できるような解説が好まれますし、ビジネスの場においても簡潔な説明ができる人が優秀とされることが多いですよね。

しかし、本書では良いこととされる「わかりやすい」に対して疑問を呈した内容です。なぜなら、タイトルの通り「わかりやすさ」には罪、悪い点があるから。例えば以下のような点が挙げられます。

わかりやすさの弊害
・選択肢によって、それ以外の選択肢が隠されてしまう
・本来重要な情報がカットされる恐れがある
・受け取り手への感情の誘導が行われる

選択肢によって、それ以外の選択を隠されてしまう

本書では選択を迫られたらまず疑う、と書かれています。

「犬と猫どっちが好き?」という他愛もないものから「この法案に賛成?それとも反対?」といった話まで、あらかじめ設定された答えから選択を迫るアンケートは多くあります。選択肢を設定するメリットは質問を受けた側が苦労なく答えを出すことができる点にありますが、出された以外の選択肢を意識の外に出してしまうデメリットもあります。

例えば異性をデートに誘う際に選択肢形式で質問する、というテクニックがあります。「イタリアンか中華料理、どちらか食べに行かない?」とか「今週と来週のスケジュール、どっちが都合良い?」とった方法。これは「断る」ことを選択肢に入れないことで、二者択一に持ち込む狙いがあるわけです。

ですので、選択肢を出された場合は、そもそもその質問に答える必要があるのか、選択肢以外の答えはないか、という点に留意が必要です。

本来重要な情報がカットされる恐れがある

会社での報告やプレゼンでは、わかりやすいことが評価の一つとなっています。わかりやすい資料を作るためには情報の余分な部分をそぎ落とすわけですが、そのカットされ捨てられる情報は本当に不要なものなのでしょうか。

こうした加工者による情報の選別。これは正直、わたしも思い当たる節があります。

例えば、会社でプレゼンをする場面では「わかりやすさ」を第一にスライドを作っています。事実、わかりやすいスライドほどウケが良い(=評価になる)。ただし、わかりやすくするために情報量を絞るわけですから、メリットはより大きくアピールし、不都合な点はは極力目立たせないようにするわけです。

ですのでわたし自身、わかりやすい情報に触れたときはその裏を想像しています。すなわち、わかりやすくするために何をカットしたのか、という点です。



受け取り手への感情の誘導が行われる

例えば「4回泣ける」と謳う映画の宣伝コピー。これは、観客に対してこれがどのような映画なのかわかりやすくアピールしている事例です。

本来、映画を見てどのような感情になるかは見た人によって異なるはず。ですが、こうしたわかりやすい手法によって「この映画を見たらこんな気持ちになりますよ」と感情を誘導することになります。

また、本書の中ではニュース番組においても「悲報」「歓喜」といった単語を含むテロップが散見される点に触れ、感情の誘導の危うさについて語られています。

MEMO
映画の宣伝コピーについて、個人的には「感動作」「衝撃作」くらいなら、ここでいう「わかりやすい」に該当しないと思っています。そうでないと、何も宣伝することができなくなってしまいますし…。ただ、上で解説したような泣く回数まで示してあげるのはやりすぎ、と考えています。

まとめ

本書では一貫して「『わかりやすい』に気を付けよう」という内容について書かれています。

この本を通じて書いてきたことは、万事は複雑であるのだし、自分の頭の中も複雑な作りをしているのだから、その複雑な状態を早々に手放すように促し、わかりやすく考えてみようよと強制してくる動きに搦め捕られないようにしよう、であった。
-P276「おわりに」より

この本には様々なわかりやすい情報と、それに誘導される人の事例が多く書かれています。つまり、分かりやすい説明が多くの人に響きやすく、喜ばれやすいのも事実ということ。

わたしは本書を読んで、わかりやすい情報に触れたときにはその裏を考えるクセが付くようになりました。自分自身がわかりやすさ流されないように気を付けつつ、時にはそれをうまく使い分ける狡さも必要だと感じました。

本書は読んでいて「その通りなんだよなぁ」と感じる反面、「けど、自分はどうなんだ?」と自問する場面が多かったです。読んでいて後ろ暗さを感じる、けれど何度も読み返したくなる、そんな本でした。

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