おなかを抱えるほど笑えて、言葉のキレに驚き、独創的な展開に驚かされる本。
今回はお笑いコンビAマッソの加納愛子さんによる初エッセイ「イルカも泳ぐわい。」の書評です。
読んでいてついつい笑ってしまう。そして、不思議な読後感がクセになる1冊です。
「イルカも泳ぐわい。」書評
書名 | イルカも泳ぐわい。 |
著者 | 加納愛子 |
出版社 | 筑摩書房 |
本体価格 | 1,400円+税 |
商品コード | 978-4-480-81559-0 |
Aマッソ加納、初めてのエッセイ集! Webちくまの人気連載「何言うてんねん」に書き下ろしを加えた全40篇を収録。言葉のアップデート、しすぎちゃう?
-商品概要より
面白い!けど腑に落ちない?不思議な読後感が楽しいエッセイ
私は2020年の「THE W」(女芸人のNo.1を決める賞レース)で初めてAマッソの漫才を知りました。
面白い!新しい!!
テレビの前でとにかく衝撃を受けました。
その後、ネタづくり担当の加納愛子さんがエッセイを出したという事を知り、早速手に取りったのが本書との出会いです。
本書を読んでいてまず驚いたのがその文章。話のなかで現実と空想とがシームレスに交わる構成に驚かされました。
例えば、「七瀬」という回では、海外ドラマ「ゴシップガール」の登場人物ダン・ハンフリーから、1946年のアメリカ映画「カサブランカ」のハンフリー・ボガートを連想。”ハンフリー”は姓でも名でもいけると気付き、そこから架空の「姓でも名でもパーティ」が繰り広げられます。
また、こうした回は起承転結も曖昧で、話の展開がくるくる変わり、オチらしいオチも無い。読者の頭にはクエスチョンマークがどんどん積み重なりますが、それらが回収されることもほとんどありません。
「私はいま一体、何を読んでいるんだろう…。」
始めはこのように感じますが、それがだんだんとクセになり、笑えてくるんです。
読み進めていくほどに、加納さんの目の付けどころというか、が面白がっているものが少しずつ理解できるような気がしてくるのも面白いところ。
もちろん、全てがそうした変化球ではありません。「はじめましてぇ~いや~うひょひょ~!」(何このタイトル…)の回は、「おばあちゃんの前でいつも以上に無邪気に振る舞ってしまう」といった、”人によって程度を変えてしまう自分“について書いています。この回は私自身にも重なるところがあるな、と勝手に共感してしまいました。
また、本書の最後には、没になったネタをもとにした小説「帰路酒」も収録。設定もさることながら普通に面白い!今後は小説家としての活躍も期待できそうです。
「イルカも泳ぐわい。」読了後にチェックしてほしいコンテンツ
ここからは本書を読んでからチェックしてほしい情報をまとめました。基本的にネット上で参照できるものだけを紹介しています。
フワちゃんによる書評
加納さんと長年親交があるというお笑い芸人のフワちゃんによる書評です。ネタバレもあるのでぜひ読了後にチェックしてみてください。
参考
加納さんの脳みそをカンニングしちゃおう|単行本|フワちゃんwebちくま
ラジオ登場回
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」という番組に加納さんが出演した回のアーカイブです。本書の内容に触れているのはもちろん、加納愛子さんのお笑い観についてもうかがい知れる放送です。
まとめ
「イルカも泳ぐわい。」は、次はどんな話が来るのか分からない、読んでいて楽しい本。
読み終えた私は、もはや目次を見るだけで笑えてきます。
Webちくまでの連載も続いています。私の中ではこれからどんな文章を読ませてくれるのか楽しみな作家の一人となりました。
また、個人的には外で読むのはオススメできません。私は通勤時の電車内で読んでいるときに、こみ上げてくる笑いを抑えることができず、少しだけ、恥ずかしい思いをしました。
面白い文章が読みたい!という人も、Aマッソのファンの人も(たぶん全員買ってるけど)オススメです。ぜひ手に取ってみて下さいね。
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