【書評】「ザ・ヘイト・ユー・ギヴ」面白いだけじゃない!黒人差別やアメリカ社会の一端を知るのに最適な1冊

現実との符号が合いすぎて鳥肌が立ちました。

ここでは翻訳小説「ザ・ヘイト・ユー・ギヴ」の書評を書いています。本書はアメリカのベストセラー小説。いま、アメリカで起こっている黒人差別の問題やブラックコミュニティの現状を物語に落とし込んだ作品です。

YA(ヤングアダルト)向け作品と見せかけて、大人でも十分に楽しむことができ、さらに学びを得た小説でした。

【書評】ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ

商品概要

書名ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ
シリーズ海外文学コレクション
著者アンジー・トーマス/作 服部理佳/訳
出版社岩崎書店
本体価格1,700円+税
商品コード978-4-265-86043-2

ギャングがはびこる町に暮らす女子高生、スター。ある晩、幼なじみのカリルが白人警官によって射殺されてしまう。目の前で起こったこの事件は、事実と異なって報道されていく。事件によって徐々に変わりゆく周囲と、スター自身の心。スターは覚悟を決めて立ち上がる。カリルの声となるために。ボストングローブ・ホーンブック賞受賞アメリカの社会問題を映しだす。
-本書の紹介文より

主人公のスターはガーデンハイツというスラム街に暮らす女子高生。ある日、幼なじみのカリルが目の前で警官に射殺されてしまいます。
普通なら撃った警官は殺人の罪に問われますよね。ですが、この物語はそうすんなりとはいきません。なぜなら撃った警官は白人で、主人公のスターと幼なじみのカリルはアフリカ系アメリカ人、いわゆる黒人だから。

なぜか加害者側の警官を擁護したり、被害者であるカリルの後ろ暗い事情ばかり報道するマスコミ。そして事件の場に居合わせたスターも徐々に話題の中心になっていきます。スターの家族や彼女が通うウィリアムソン校(裕福な白人ばかりの学校)の友人たち、そこにマスコミやガーデンハイツのギャングが絡み、スターの日常が大きく変わっていく、という内容です。

著者とブラックコミュニティについて

この物語ではアメリカのブラックコミュニティが描かれています。というのも著者のアンジー・トーマスさんもアフリカ系アメリカ人。6歳の頃に銃撃戦の音を聴いた、というエピソードからは、本書におけるガーデンハイツへの影響も伺えます。

また、執筆のインスピレーションに2PAC(トゥパック、アメリカのラッパー)をあげており、本書のタイトルも彼のタトゥーからインスピレーションを得ています。また、物語の中でも2PACやケンドリック・ラマーといった実在するラッパーの歌詞や言葉も引用されており、ブラックコミュニティの中でのヒップホップの役割をうかがい知ることができます。

また、本書はフィクションではありますが、私たちがいるリアルな世界と地続きになっています。例えばスターは両親から警官への対応を言い聞かせられます(両手は見えるところに出しておく、自分からは話しかけない、、、等)が、これは黒人家庭で実際に行われていること。

参考 黒人青年が母から言われた「16のやってはいけないこと」が、黒人にとって警察がどれほど脅威かを教えてくれるハフポスト日本版

わたしは2020年4月に起こった#BlackLivesMatter運動の影響を受けて本書を手に取りました。2017年に書かれた内容ですが、3年後のジョージフロイドさんが白人警官に暴行され亡くなった事件との符号があまりにも多く、読んでいて鳥肌が立ちました。

まとめ

「ザ・ヘイト・ユー・ギヴ」はアメリカの社会問題が反映しつつもキツイ表現がなく、子どもでも読むことができる内容です。実際に本書はYA(ヤングアダルト)に分類されています。

また、現代のアメリカで起こっている黒人差別やブラックコミュニティの一端を知る、という点でもオススメです。特にブラックミュージックやヒップホップを聴く人はぜひ一読を。

ここでは少し本筋から外れましたが、単純に物語の展開そのものも面白い!正直、主人公のスターの立場はかなり厳しい。厳しいけれども、周りの人に恵まれているのが救いです。物語の中で、彼女は幼馴染のカリルのために立ち上がるのですが、さてそれがどうなるか…結末は本書を読んで確かめてみてください。

また、「ザ・ヘイト・ユー・ギヴ」はアメリカでベストセラーになり、映画化もされています。本書を読んで気に入った人はこちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。

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