日本語ラップにハマッた人に一度は読んでほしい本。
それが「日本語ラップ・インタビューズ」です。
日本でのヒップホップの成り立ちや歴史、ラップ技術の進化を俯瞰することができる一冊。
ここでは、ヒップホップヘッズはもちろん、初心者リスナーにもおすすめできる本書を紹介していきます。
【書評】日本語ラップ・インタビューズ
本書は、雑誌「ユリイカ」で特集された「特集 日本語ラップ」をまとめたもの。
日本語ラップの黎明期から2010年代まで、8名のラッパーのインタビュー集です。
ここで、本書の目次を紹介します。
第1章 いとうせいこう―自転車に乗ってどこまでも(聞き手=磯部涼)
第2章 Zeebra―シーンを導く表現技法(聞き手=佐藤雄一)
第3章 般若―“昭和の残党”の戦い(聞き手=二木信)
第4章 漢a.k.a.GAMI×ANARCHY―“ヒップホップ”の証明 ストリートを超えて(聞き手=二木信)
第5章 KOHH―滲みだす“叫び”(聞き手=山田文大)
第6章 MARIA―パーティー・ヒップホップ・ヨコハマ(聞き手=二木信)
第7章 T‐Pablow―「内なるJ」と向かい合う(聞き手=磯部涼)「日本語ラップ・インタビューズ」目次より
書籍化にあたりMARIA(SIMI LAB)とT-Pablow(BAD HOP)のインタビューを新たに収録。2人のインタビューは結構なページ数を割いており、読み応えがあります。
1961年生まれのいとうせいこうから1995年生まれのT-Pablowまで、幅広い世代が取り上げられています。
各時代を代表するラッパーの証言集
ラップをどのように日本語に落とし込んだのか。そしてどのようにラップの技術を進化・発展させたのか。これらをその時代の”現場”にいたラッパーの証言で語られます。
インタビューの中では各々のラッパーのヒップホップ観をうかがい知ることができます。
例えば「第4章 漢a.k.a.GAMI×ANARCHY」でのヒップホップとビジネスについて、
「20代はストリートビジネスで稼いだ金で音楽をやるつもりだった(要約)※」
と言う漢a.k.a.GAMIに対し、ANARCHYは、
「これ(ラップ)一本でいこうと思って、23歳以降はラップ以外で稼いでいない」
とそれぞれ対称的な内容を語っています(ちなみに、4章は上記以外にも「ストリート」に関する議論など、興味深い内容が満載でオススメです)。
このように、人によってヒップホップの定義は異なり、コレといった答えがあるものではありません。ですが、異なるヒップホップ観を知ることが「日本におけるヒップホップとは何か」を理解する一助となるはずです。
※補足事項
漢a.k.a.GAMIは上記の発言の後に「ヒップホップを使ってどうやってビジネスとしてメイクマネーしていこうかっていうことは、いまのほうがよっぽど考えている(原文ママ)」と繋いでいます。
また、本書では年代順にインタビューが掲載。そのため、通して読むだけで日本語ラップの歴史・技術の変遷をざっくりと理解できるのも本書の推しポイントの一つです。
まとめ
個人的に、ヒップホップは文脈が重要なジャンルだと感じています。文脈とは過去の歴史やラッパーごとの関係性を理解するということ。文脈=知識と言い換えることもできます。
日本語ラップそのものの成り立ちや過去のクラシック(=名曲)、ラッパー自体の出自を知ることで、より音源を楽しむことができると思っています。
本書「日本語ラップ・インタビューズ」は、そうした知識を得るためにピッタリの一冊。日本のヒップホップをより深く知りたい人は、ぜひ手に取ってみてくださいね。