そういう意味で言ったわけじゃないのに…。
自分の発言が違う意味に誤解されてしまった経験はないでしょうか。思っていることを相手に正しく伝えるのは難しいものですよね。
その問題は「作文力」を鍛えることで解決できるかもしれません。今回は現役東大生による作文術のビジネス書「東大作文」をレビューします。
【書評】「伝える力」と「地頭力」がいっきに高まる 東大作文
書名 | 「伝える力」と「地頭力」がいっきに高まる 東大作文 |
著者 | 西岡壱誠 |
出版社 | 東洋経済新報社 |
本体価格 | 1,400+税 |
商品コード | 978-4-492-04639-5 |
読めて、考えられても、書けなければ東大は受からない。ベストセラー東大生による「偏差値35でもできた、誰にでも伝わる」作文術!
-本書の紹介文より
著者の西岡壱誠さんは現代東大生(※この記事執筆時点)。偏差値35歳から東大を目指し、二浪の末はれて東京大学に合格。その際に開発した「思考法」「読書術」「作文術」で偏差値70に。著者に「東大読書」「東大思考」(ともに東洋経済新報社)がある。
著者いわく東大生には「作文力」が必要不可欠。なぜなら、東大の入試問題はすべて記述式だから。つまり、問題を解くだけでなく、採点者に正しく伝える力「作文力」が必要だというわけです。
作文は「双方向」を意識するとうまくいく
私は作文について、「自分の意見を相手に伝えるもの」という理解をしていました。例えば小学生の読書感想文であれば自分⇒先生、会社の報告書であれば自分⇒上司。情報を一方通行に送るイメージです。
ですが「東大作文」では、作文に必要なのは「双方向」とだと書かれています。つまり、(自分の文章を読んだ)相手にどう動いてほしいかを意識した能動的な文章作りが重要。そのために必要な5つのメソッドを学ぶことができます。
②目次作りで「読みやすい文章」になる
③1人ディベートで「説得力ある文章」を書く
④質問トラップで「読者を引き込む文章」を書く
⑤枝葉切りで「スマートな文章」が書ける
①②ではうまい作文を作るためのメソッド。自分から相手に対して情報を正しく伝える構造作りの技法。③④で自分の文章に対して相手から興味を持ってもらうための技法(本書では読者を記者にする、と表現されています)。そして最後の⑤で全体の体裁を見直して作文を完成させる、という手順。これらのメソッドは「双方向」に文章を伝えるという一貫した目的を持っています。
東大作文で「地頭力」が高まるわけ
本書のタイトルには「伝える力」と「地頭力」が一気に高まる、とあります。作文で伝わる力が高まるのはわかりますよね。しかし、「地頭力」も高くなるのはなぜか、ちょっと繋がりにくいですよね。これは、本書を読むとその理由がわかります。
まず、「双方向」な文章を書くためには相手の立場に立つことが必要不可欠。普段から自分や相手の視点に立った文章を意識することで、「客観的思考力」や「論理的思考」、「コミュケーション能力」といった、「地頭力」を高めることに繋がる、というわけです。
「地頭力」、あまり聴きなれない単語ですよね。その人本来の頭の良さを表す言葉ですが、その定義は、「論的思考能力」のような思考力から「コミュニケーション能力」といった対人能力まで広範にわたります。
恐らく初出は2007年発売の『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』(東洋経済新報社)以降に広まったものと考えられます。
まとめ
言いたいことをそのまま相手に伝えても、自分の意図どおりに受け取ってもらえるかはわかりません。時には、誤解されてしまう場合もあるでしょう。
本書では一貫して「双方向的な文章のつくり方」について書かれています。「作文」と銘打っていますが、伝えたいことを構造化して相手の立場に立って言葉を選ぶ。これは作文だけに必要なスキルではありません。
「東大作文」は、SNSやブログにも使えるのはもちろん、報告書やプレゼンといった仕事にも生かせるスキル。本書の後半にあるメールや報告書といったケース別の事例によって活用例も学ぶことができます。ちなみに私の場合は、会社の昇進試験で本書のメソッドがたいへん役に立ちました。
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