あなたはネット発の怪談というと、何を思い浮かべますか?
もしかしたら「きさらぎ駅」や「八尺様」、「コトリバコ」といった、いわゆる「洒落怖※」の話を思い浮かべた人もいるのではないでしょうか。
今回は同じネット発の怪談、それも海外発の怖い話をまとめた本「【閲覧注意】ネットの怖い話 クリーピーパスタ」を紹介します。
※洒落怖・・・旧2chオカルト版のスレッド「死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない?」の通称
商品名 | 【閲覧注意】ネットの怖い話 クリーピーパスタ |
編者 | ミスター・クリーピーパスタ |
出版社 | 早川書房 |
刊行日 | 2022年7月20日 |
価格 | 946円(税込) |
この本は、以下のような方に特におすすめです。
- ホラー映画や怖い話が好きな人
- 海外のネット怪談に興味がある人
- 普段読まないジャンルの本に興味がある人
※逆にグロテスクな表現が多めなので「怖い話は好きだけれど、グロテスクな表現は苦手」という人にはクリーピーパスタは合わないと感じるかもしれません。
「【閲覧注意】ネットの怖い話 クリーピーパスタ」は、アメリカのネット怪談を詰め込んだショートストーリー集です。
題名にあるクリーピーパスタとは、「不気味な」という意味を持つ「クリーピー(Creepy)」と「コピー&ペースト(copy pasta-ed)」という2つの言葉を組み合わせた造語です。
その起源は不明ですが、今ではインターネット上で発表されているホラー作品を広く「クリーピーパスタ」と呼ぶようになっているようです(本書、訳者あとがきより)。
本書には、アメリカでネット上の怖い話や都市伝説を広めるYoutube上で発信している「ミスター・クリーピーパスタ」が編集。
綿密に計画をたて女性の家に忍び込んだ殺人ストーカーが異変に巻き込まれる「殺人者ジェフは時間厳守」や、ジャーナリスト志望者がフロッピーディスクに込められた呪いを目撃する「スマイル・モンタナ」など、彼が厳選した15篇のショートストーリーが収められています。
私は書店で「日本のネット怪談をまとめた本」と勘違いして本書を手に取りました。中身を読んで初めてアメリカ発の”クリーピーパスタ”を収録していると気が付いたのですが、意図しないジャンルに触れることができたのは嬉しい誤算でした。
収録されているクリーピーパスタはいずれも緻密なストーリーテリングで表現されており興味深く読めました。舞台がモーテルだったり、登場人物が精神疾患を患っている事例が多いのはいかにもアメリカっぽいなぁと感じますし、新鮮な気持ちで読み進められます。
また、本書を読むことで日本と海外の”恐怖表現”の違いに気付けるのも良かったです。日本の怪談では冒頭で挙げた「洒落怖」の話を筆頭に、不気味だったり、得体の知れない事そのものに恐怖を感じさせる展開が多いです。
一方、クリーピーパスタではそれとは対照的に、直接的な暴力やグロテスク描写等、ショッキングな展開が多いんですよね。文化背景によって”怖い”と感じる対象が異なるのは興味深いです。
本書のあとがきで日本の「八尺様」が海外では”hachishakusama(またはEight Feet Tall)”としてクリーピーパスタの仲間入りをしている事例が紹介されていました。異なる文化間で怪談が伝わっているのですね。残念ながらhachishakusamaは本書には掲載されていませんが、以下のサイトで読むことができます。
英語ですが、ブラウザの翻訳機能を使えば日本語でも読めます。海外版ならではの改変があるのは面白いです。
「【閲覧注意】ネットの怖い話 クリーピーパスタ」は、アメリカのネット怪談を詰め込んだショートストーリー集です。
私のお気に入りは、精神疾患を患う男が主人公の物語「妄想患者」(本書p205)。それまでの印象をラストの5行で180度ひっくり返すストーリーには驚かされました。
怖い話が好きなあなた!クリーピーパスタの世界に足を踏み入れて、この恐怖を味わってみてはいかがでしょうか?