アメリカではヒップホップもはやメインストリームに!
今やヒップホップは売上でロックを上回っている。
同様に、日本でもヒップホップが一般に浸透しつつあります。
TV番組「フリースタイルダンジョン」をきっかけにラップバトルが流行したり、音楽チャートでヒップホップの曲が入ってくることも珍しいことではなくなりました。
そんな中、ヒップホップの歴史を最速で学べる教科書が出てしまいました。
それが『ライムスター宇多丸の「ラップ史」入門』(NHK出版)です。
ヒップホップシーンの当事者による解説
本書は2018年に1日8日にNHK-FMで放送された「今日は一日”RAP”三昧」を書籍化したものです。ラジオのパーソナリティは以下の4名。
ライムスター宇多丸
ラッパー/ラジオパーソナリティ。1989年にラップグループ「ライムスター」を結成。日本語ラップシーンを黎明期よりけん引してきた立役者。
現在はTBSラジオ「アフター6ジャンクション」のメインパーソナリティもつとめる。
高橋芳朗
音楽ジャーナリスト。ヒップホップ専門誌「blast」(現在は廃刊)の編集者を経て、フリーの音楽ジャーナリストとして活躍。
DJ YANATAKE
DJ。宇田川町のレコードショップのバイヤー、MTV JAPANの選曲家という経歴を持つ。現在はblock.fm「INSIDE OUT」のラジオパーソナリティを務めている。
渡辺志保
音楽ライター。特に本場アメリカのヒップホップシーンに明るく、歌詞の対訳や文筆活動に携わる。block.fm「INSIDE OUT」のラジオパーソナリティを務めている。最近ではケンドリックラマー来日インタビューの監修も行う。
現場の第一線で活躍するミュージシャンDJから、音楽ジャーナリストにライターと完璧な布陣。また、要所でいとうせいこう、スチャダラパーのBose、Zeebra、漢a.k.a.GAMI、フィナーレではBAD HOPがゲストとして登場します。
本場アメリカの歴史と並行して学べる
宇多丸さん曰く当初「今日は一日”RAP”三昧」の企画は日本語ラップ中心で打診されたとのこと。その後、打ち合わせを重ね「アメリカ・日本シーンの歴史を交互に紹介する」という進行スタイルに決定したそうです。
その時代その時代の日本語ラップ作品が「なぜ、こうなっているのか」を真に理解するためには、その時点までのアメリカのラップ作品の流れを知っておくことが不可欠、と言いきっていいほどだと個人的には考えています。
日本のシーンを追っていく上でも、まずヒップホップの本場であるアメリカを理解することが大事、と言っているんですね。
まず約10年区切りでアメリカの歴史を紹介。その後、「一方日本では…」という流れで日本語ラップの出来事を紹介しています。
この方式、かなりハマっているんじゃないでしょうか。というのも日本語ラップはここ数年だけでもスタイルの変化が見られます。例えばトラップビートの流行やマンブルラップ(モゴモゴと敢えて聴き取りにくいラップスタイル)の登場などが好事例。
これらの事象が起きる際にもアメリカのシーンとの動きが関係しています。交互に紹介することで双方の、特に日本語ラップへの理解がより深まる構成となっています。
ストリーミングサービスを活用するとより理解が深まる
紹介されている曲を聴くとこができない。
(本なので当たり前ですが…)これが唯一の欠点と言えるかもしれません。
ここについては、ぜひ現代の叡智。ストリーミングサービスを活用することで補いましょう。
なんと、パーソナリティの一人である渡辺志保さんがSpotifyでプレイリストを公開しています。当然、放送された順という親切ぶり!
ぜひ音楽を聴きながら読み進めるのをおすすめします。
『ライムスター宇多丸の「ラップ史」入門』の楽曲、Spotifyにてプレイリストにまとめております🔥「RAP三昧」生放送中にまとめたものです📻 https://t.co/hh4nYV0fzV
— Shiho Watanabe (@shiho_wk) 2018年10月30日
さいごに
ヒップホップの歴史を学ぶ、というと教科書や参考書のような内容をイメージするかもしれません。本書は約300ページ、厚めの装丁です。
しかし、ラジオが元ネタだけあり基本的に4人の対話形式で話が進んでいきます。そのため、意外にもするすると読み進められるんです。
もちろんヒップホップに興味を持ったばかりの人も、日本語ラップのみチェックしていた人も、歴史を総ざらいしたい人…。ともかくヒップホップに触れている人はマストバイな一冊ですよ!