「Rの異常な愛情」は2018年12月~2019年8月に掛けて開催されたトークイベント。
MCバトルの全国大会U3連覇を成し遂げ、ヒップホップユニットCreepy Nutsとして活動中のラッパーR-指定が日本語ラップの魅力を語りつくす内容です。
今回、このイベントの内容が書籍化すると聞きつけ、早速ゲットしてきました。
目次
「Rの異常な愛情」書評
「Rの異常な愛情」の構成
本書は冒頭にあげたトークイベント、全6回分を対談形式でまとめた書籍。
対談相手は音楽ライターの高木”JET”晋一郎氏。二人の会話形式で進んでいくため、すんなりと読み進められます。
まずは目次を参照してみます。
「Rの異常な愛情」【目次】
第1章 Rの異常な愛情
第2章 SHINGO★西成と漢 a.k.a. GAMIと「話芸」
第3章 餓鬼レンジャー登場
第4章 般若の生き様
第5章 THA BLUE HERBの旅路
第6章 00年代のRHYMESTER
対談 Mummy-D×R-指定
第1章は導入部。R-指定が日本語ラップにハマっていった入口の話。以降は6章まで特定のアーティストに焦点を当てた内容となっています。
何より特筆すべきは、本書のために特別に行われたライムスターのMummy-DとR-指定の対談。トップランナーの二人がラップの技術論を語り合う貴重な対談です。
また、対談中に挙がったアーティスト名や曲名、固有名詞等はページ下部に補足解説を掲載。日本語ラップに詳しくない人も置いてけぼりにされないような工夫がなされています。
圧倒的すぎる情報量
私が本書を読み進めてまず感じたのが、
とにかく情報量が多すぎる!
という感想でした。
もともとヒップホップファン向けのトークイベントだったためか、基礎的な情報はすっ飛ばして会話が進みます。
また、章ごとに焦点を当てるアーティストを決めていますが、そのラッパーや人となりの話では終わりません。主に曲中のフレーズやリリックを深掘りしまくる内容です。
例えば、ストリート出身のラッパーであるSHINGO★西成と漢 a.k.a. GAMIを取り上げた第2章。
2人のストリート感の違いをSHINGO★西成は生活者の視点、漢 a.k.a. GAMIはビジネスの場所という違いがあるという話から始まり、ライミングの話まで深掘りしていきます。
R そういった「口調」「喋り」と「ライミング」「ラップ」がシームレスに繋がるのは、シンゴさんもそうなんですよね。
~中略~
「貧富の差」っていう言葉は、DJ KRUSH “MOSA feat. KAN”で、漢さんも使ってるんですけど、漢さんは<誰もが狙ってるキングの座>ってつなげるんですよね。一方シンゴさんは<ピンプの歯>になる。その認識の違いも興味深いし、連想される韻は人によってこんなに違うんやって。第2章 SHINGO★西成と漢 a.k.a. GAMIと「話芸」より引用
本の内容は上記のようなマニアック、ヒップホップ用語でいえばドープな内容が終始続きます。
その時代にどんな技術の発明があったのか、あるラップの技術が当時どのように革新的だったのか、といった内容。本人いわく、
「雑誌やインタビュー記事では作品について、なかなか細かいリリックや構成まで語られづらい。だから普段仲間内で話しているような内容をリスナーの人にも聴いてほしかった」(要約)
とのこと。
まるで脳のシナプスが繋がるように、あのアルバムの時期はこうだった、客演(feat.)したラッパーはこうだった、というように話がドンドン繋がります。この情報量がめちゃくちゃ多いのです。どれくらい多いかというと、本文下に記載される補足事項の数が350単語を超えるほど。
また、対談形式ではありますが会話の8割以上はR-指定の言葉。1ページ約520文字250ページの本なので、およそ10万文字以上をR-指定が喋り倒していることになります。
まとめ
本を読んでいて感じるのが、R-指定の日本語ラップに対するまさに異常な愛情。
とにかく、重度のヘッズでもあり一流のラッパーでもあるR-指定が、日本語ラップに対する偏愛を語りまくる最高の一冊です。
特にプレイヤー視点からのロジカルなリリック、ライミングの解説は読んでいて非常に勉強になります。リスナーとして日本語ラップを聴く際の新しい視点を得られるのではないでしょうか。
おそらく1回読んだだけでは情報を整理しきれない、それだけ濃密な内容です。
と、いうことで日本語ラップリスナーであれば一度は読んでおきたい1冊。ぜひ手に取ってみてください!
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R-指定が日本語ラップの魅力を語り尽くす──。
中学生でヒップホップに出会い、人生が変わった最強のバトルMC。
誰よりも日本語ラップを愛したR-指定がレジェンドたちの名盤・リリック・スキルを妄想&分析して徹底解説!
日本語ラップを愛する全ヘッズに捧げる一冊。
最後に…サブスクの活用がオススメ
R-指定は中学生時代、TSUTAYAのレンタルで様々なアルバムをディグっていたと語っています。
いまは、当時と違いサブスクリプションサービスによって様々な作品をすぐに聴くことができます。サブスクサービスを活用しながら本書を読み進めることで、より日本語ラップへの理解が深まるはず。
ちなみに私はもともと<Amazon Music Unlimited>を利用していますが、本書に出てきた作品はほとんど聴くことができました。
個人的な話ですが、私は最後の対談を読んで、すぐさま「マボロシ」をダウンロードして聴きまくりました。
初めの30日間は無料で利用できるので、まだ未登録の人は試してみてもいいかもしれませんよ。