【書評】「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」AI時代に必要な能力は?子どもを持つ親必読の1冊!

IBMが開発したWatsonや同じくチェス専用の人口知能ディープブルー、変わりダネでは日経新聞がAIを採用した記事作成(AI記者)等。

ここ最近、AIという言葉を聞かない日はないくらいです。

そんな折、書店で「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」という本を見かけ、購入しました。結論から言って子どもへの教育だけでなく、現役世代の必読書といってもいい内容でした。

著者の新井紀子氏は数学者。2011年より人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトを主導した人物の一人。同プロジェクトは「東ロボくん」という愛称で大きくメディアにも取り上げられていたので、ご存知の人も多いのではないでしょうか。

今やAIの偏差値はMARCH合格レベル

いまやAIの偏差値は57.1、これは全国の約70%にあたる535の大学で合格圏内の数値です。この中には国立大学やMARCH、関関同立といった難関大学の一部の学部・学科も含まれています(驚くべきことに数学(理系)の偏差値は76.2もあるそうです)。

シンギュラリティは来ない、けれど今ある大半の仕事はAIに奪われる

AIと同様に語られるシンギュラリティという言葉があります。
シンギュラリティは「機械(AI)が人間を超える」といった意味。

本書では「東ロボくん」の成長過程や他のAIプロジェクトの例を挙げた上で「シンギュラリティは来ない」と断言しています。

ですが、今ある大半の仕事はAIに取って代わられる可能性が高いとも指摘します。
オックスフォード大学の研究では10年から20年後には今ある仕事の半数がAIによってなくなるとの予測もされているそうです。

でも、シンギュラリティが到来しないことはめでたいことではありませんか。私たち人間の出番はまだたくさんある、ということを意味するのですから。
残る問題は、ただの計算機に過ぎないAIに代替されない人間が、今の社会の何割を占めているかと言うことです。
(第2章、桜散る-シンギュラリティはSFより)

AIが苦手なことは人間も苦手?

本書ではAIは意味を理解することができない。つまり「読解力」がないことが弱み。
そしてその「読解力」こそがこれからの子どもたちの人生を左右する能力だといいます。
その上で、今の中高生の読解力が危機的な状況にあることを指摘します。

例えば、著者が実施したテストに出題した以下のような問題です。

幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。

 

この文が表す内容と以下の文が表す内容は同じか。「同じである」「異なる」のうちから答えなさい。

 

1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。

新聞にも取り上げられ、大きな話題になった問題ですので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
答えは当然「異なる」です。人間には簡単でもAIにとってはこういった問題を解くのは非常に難しいとのことです。ですが、この問題の中学生の正答率は57%。まさにタイトルの通り教科書が読めない子どもが増えている証左と言えるでしょう。

それでも暗記やドリルを多くこなすことである程度のレベルの大学に入ることができます。しかし、それらはAIが得意なことでもある。
こういった事例から「AIが苦手なことが本当に人間にできるのか」という問題を提示しています。

ちなみに、本書の中には以下のような問題もあります。

Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。

 

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択しのうちから1つ選びなさい。

 

Alexandraの愛称は(     )である。

 

①Alex ②Alexander ③男性 ④女性

この問題は中学生の正答率38%でした。答えはぜひ本書を確認してみてください。

読解力=「バカの壁」では

こういった内容を読んでいてはたと気づきました。実生活(主に私の場合は会社)でも同じような事例があるなぁと。
どれだけ話をしても意味が通じない人、「わかりました」と言うけれど全然わかってくれない部下…。
養老孟子さんは話が通じない時、情報を遮断しているものを「バカの壁」と表現していました。

話をしていてもラチがあかない、思考停止して話が進まないといった「バカの壁」を解くカギ。
それがまさに読解力なのかもしれません。

まとめ

今後、ホワイトカラーの仕事の半数がAIに取って代わられるかもしれない。
そんな暗い未来に向けて今の子どもたちに必要なものは何か。

本書はわが子の教育方針を決めるうえで必読の1冊です。
著者は数学者ですが、難しい数式はほとんど用いていません。

また、AIという曖昧模糊なモノを理解する一助になると思います(本書では「真の意味でのAI」と「AI技術」にわけて解説しています)。

そして、むしろ私たち現役世代こそ必読の一冊です。
何しろ、今ある仕事の大半が10年から20年の間になくなると言われているのですから。

著者の新井紀子さんは「東ロボくん」の研究でTEDでの演説もされています。

上記の動画は日本語翻訳されています。本書の内容に興味がある方は視聴してみてはいかがでしょうか。

 

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